ぼくと世界とキミ
「かつてこの世界は一つでした。人も魔物も……全ての命ある者達が共存し、魔力の溢れる地を生きていました。しかしある時、それが崩れてしまった。優れた知能を持つ人間こそがこの世界を統べるに相応しい。そんな考えを持つ者が現れたのです。それは後に大きな争いとなり……多くの者が命を落としました」
……聞いた事があった。
数千年前に起こった……《人》と《魔物》の戦争。
数百年続いた争いは、人間の勝利で終わり……魔物は世界の端々へと追いやられる事になったとか。
「そして世界は四つに分かれ、後のセレリア、メルキア、フリーディア、グレノアとなったのです」
……それでも争いは終わらなかった。
……敵が……同じ人間同士に変わっただけ。
あんなに受けるのが嫌だった歴史の勉強が……今、役に立っている様な気がする。
「それぞれに分かれた国は絶えず争い続け……そして《マナ》が狂い始めた」
「……マナが……狂う?」
その言葉が酷く俺の心をざわめかせた。
「マナは命の源。命はマナから生まれ、そして死者はマナに還(かえ)る」
女はそう言うと、悲しそうに瞳を揺らした。
……知っている。
……俺は……知っている。
ドクドクと壊れそうなほどに心臓が鼓動を速め、息が上手く出来ない。