ぼくと世界とキミ

「……負の……感情?」

俺の唇が震え……勝手に声が漏れ出す。

するとジルが少し驚いた様に目を見開き、俺を見つめた。

……そう……俺は……知っている。

「……そう……《負の感情》。争いの中で死んでいった者達の心。悲しみ、怒り、殺意、憎悪。そのありとあらゆる《負の感情》がマナに流れ込んだ。そしてそれはマナを少しずつ蝕んでいった。本当に少しずつ……何千年もかけて」

女はそう言って悲しそうに微笑むと、静かに俯いた。

「……それならば……勇者の役目とは」

「勇者はマナを壊し世界を救う存在。マナは負の感情に駆られ、この世界を崩壊させる。……その前にマナを壊す。それが勇者ロイ……貴方の役目」

ジルの問いに女はそう答えると、真っ直ぐに俺を見つめた。

……《勇者》

その言葉に右肩の《痣》が、また異常な程に反応する。

「《証を持ちし者》を集め、その力を解放して世界を救う。それがロイ、貴方の生まれた理由」

女は俺を見つめたままそう言い放つと、俺の答えを待つように小さく首を傾げて見せた。

……世界を救うために生まれた?

女の言葉を頭の中で繰り返したその瞬間……今までずっと思っていた言葉が溢れ出た。
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