ぼくと世界とキミ

薄暗く深い森の中をスタスタと歩くセリアを先頭に、ジル、そして俺がついて行く。

「……なぁ?セリアの事……教えてくれないか?これから一緒に旅するわけだし……」

そう言って微かに頬を赤く染め笑いかけると、セリアは少し驚いた顔をして……でも、すぐにニッコリと笑みを返した。

それからセリアは少し歩く速度を落とすと、小さく口を開く。

「私は……セレス様に創られた存在なの。見た目も中身も人間と同じ様に、でも人間よりも少しだけ力を持つ様に創られているの。いつか来る勇者を導くための……案内役みたいな感じかな?」

そう言ってセリアは首を傾げて笑う。

ジルは俺の少し前を黙々と歩きながらも、セリアの話に耳を傾けている様だった。

「マナまでの案内役。セレス様はあの場所を動けないから……私が代わりにマナを見つけるの」

「マナの居場所が分かるのか?」

その俺の問い掛けにセリアは表情を曇らせると、静かに俯いた。

「今は……分らない。でもマナが近くに居れば、きっと感じるはず。マナは世界の《闇》や《死》が溢れる場所を巡っていると思うの。命の憎しみ、怒り、絶望……《負の感情》がマナを惹き付ける」

そう言うとセリアは悲しそうに瞳を揺らした。

セリアの悲しそうな顔を見ていると、なぜか胸が締め付けられる様に苦しくなる。

それから微かに……あの《証》が痛んだ。

そっと右肩に手を触れたその時……急に奇妙な感じがした。

何か薄い膜を通り抜けた様な……そんな感じ。

しかし二人は何の反応も示さない。

……気のせいか?
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