妹に陥れられ追放された令嬢ですが、氷の王弟に息子ともども溺愛されています
「こちらはキースリングの騎士だ。安全が確保できたので扉を開ける。できるだけ離れていろ」
先ほど聞いた声と同じだ。
「はい、下がりました」
返事をするとすぐに、軋んだ音を立てて扉が開く。
肩を寄せ合うメレディスたちの目前に現れたのは、驚くくらい整った顔立ちの青年だった。
すらりとした長身で、濃灰色の騎士服を身にまとっている。艶やかな黒髪に深い青の瞳。
メレディスはそのとき、物語で読んだ孤高の王を思い出していた。
彼の全身から溢れ出る気高く冷ややかな威厳が、とうていただの騎士とは思えなかったのだ。
メレディスが言葉もなく見入っている一方で、彼もメレディスを凝視していた。
すると突然、感情を凍らせたような彼の表情に変化が起きた。
彼の瞳が、思いがけない事態に遭遇したときのように揺れている。
言葉もなく見つめ合っていると、レオナが「お嬢様」と心配そうに囁いた。
メレディスはその声にはっとする。同時に羞恥心が湧いてきた。
(男性の顔をじろじろ見てしまうなんて)
自分らしくない失態だ。しかも相手は窮地を救ってくれた恩人だというのに。
メレディスは即座に気持ちを切り替え、彼に真剣な目を向けた。
「危ないところを助けて下さりありがとうございます。私はメレディスと申します。こちらはレオナ」
メレディスの発言に合わせて、レオナが頭を下げる。男性が頷いた。
「最近、この辺りで強盗被害が続出しているため、見回っていた。危ないところだったが間に合ってよかった」
彼の口調が、大分柔らかくなったことに気がついた。
(警戒が解けたのね)
メレディスは安心して、笑みを浮かべる。
「本当にありがとうございました。あの、私たちの護衛騎士を見かけませんでしたか?」
先ほどからオスカーの姿が見えないことに不安を感じていた。