妹に陥れられ追放された令嬢ですが、氷の王弟に息子ともども溺愛されています
「先日、王太子殿下とは婚約解消いたしました。これからリントン村に向かうところです」
淡々と答えたつもりだったが、カイエンは驚きの表情を浮かべた。
「婚約解消……本当なのか?」
「はい。近いうちに王家から、正式に婚約者変更の発表があるはずです」
カイエンの眉間に深いしわが寄った。
「……まさかマティアスが君に対して策略を巡らせ地位を奪ったのか?」
彼の声が一段低くなる。周囲の温度が下がったような錯覚を覚えた。
(どうして急に怒りだしたの?)
少し怖くなり、メレディスは早口で彼の質問に答える。
「いえ、私の都合で婚約者の座を降りました」
するとカイエンの怒気が和らいだ。
「なぜリントン村に? あそこは王都の貴族令嬢が行くような土地ではないが」
「移住するためです」
「移住?」
カイエンの顔に今度は戸惑いが浮かぶ。
第一印象は気高く感情を見せない氷のような人物だと感じたが、今は驚くくらい表情が変わる。それにやけにメレディスに興味があるようだ。
(もしかして私を心配してる? いえ、そんなはずは……)
カイエンとは個人的にもカロッサ公爵家とも、一切の関わりがなかったのだ。かといって彼は、冷酷無情と噂をされるような人だ。
高貴な身分でありながら、恐れられるあまり未だに婚約者すらいない。
メレディス自身、初対面のときの彼からは、近づきがたい冷ややかさを感じた。
おそらく警戒心が強い性格なのだろう。
誰彼構わず人助けをするとは思えない。ただ、少し話してみると、印象が変わった。
今は積極的にメレディスに関わろうとしているように見える。
彼の甥の元婚約者だから、義務として保護しようとしているのだろうか。
カイエンは難しい顔をして考え事をしていたが、やがて決意したようにメレディスを見つめた。