妹に陥れられ追放された令嬢ですが、氷の王弟に息子ともども溺愛されています

「移住を希望しているならキースリング領に来ないか? 一等地に屋敷を用意する」

 予想を超える手厚い申し出に、メレディスは一瞬、呆けてしまった。

「い、いえ……そのようなお気遣いは無用です。私のことは捨て置いてくださいませ」

 今日初めて会った王族に屋敷を用意して貰うなんて、あり得ないことだ。

「それはできない。この街道と同様にリントン村の治安にも不安がある。君が僅かな供と暮らせるような場所ではない。危険すぎる」
「王都で調べたときは、そのような情報はありませんでしたが」

 カイエンの勢いに圧されながら、答える。

 リントン村には王都のような娯楽はないが、平和で自然豊かな村だったはずだ。

 北方の中では気候が安定しており、雪に慣れていない者でも暮らしやすい。

(もしかして、間違った情報だったの?)

「小さな村で他領との行き来がないから、知られていないのだろう。街道の件も知らなかったはずだ」

 そう言われると反論できなくなる。メレディスは仕方なく頷いた。

「でもすぐに決断は出来ません。一度村に行って様子を見てみないと」

 譲歩したからか、カイエンはそれ以上何も言わなくなった。

 街道の脇、森を背にする位置で、オスカーは手当を受けていた。

 腕に包帯を巻いているものの、しっかりした様子で敷物の上に座っている。

 メレディスが声をかける前に、オスカーがこちらに気がつき立ち上がろうとした。

「オスカー、怪我の具合は?」
「お嬢様。不甲斐なく負傷してしまい申し訳ありません」
「そんなこと言わないで。あんなに沢山の野盗が居たんだから無理ないわ……護衛の方たちはどこに? 彼らは無事なの?」

 近くには姿が見当たらない。メレディスが彼らの姿を求めて辺りを見回していると、オスカーの表情が暗くなった。

「あいつらを探す必要はありません。裏切られました」
「裏切り?」

 メレディは戸惑い、眉根を寄せた。

 昨夜宿泊した村で雇った護衛は、オスカーのような修練を積んだ騎士ではないものの、礼儀正しく、本人たちも体力には自信があると言っていた。少なくとも野盗の襲撃を受けて真っ先に逃げ出すようには見えなかった。

「あの護衛は野盗の仲間だ」

 メレディスの疑問を察したように、カイエンが口を挟んだ。
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