妹に陥れられ追放された令嬢ですが、氷の王弟に息子ともども溺愛されています
「……初対面?」
「あの、もしかしてどこかでご挨拶させていただいていたでしょうか?」
そんなはずはないが、カイエンの反応を見ていると自信がなくなる。
「いや、気にするな。ただ、兄からカロッサ公爵の話をよく聞いていたし、俺も以前世話になったことがある。それで他人という気がしないだけだ」
「まあ、陛下が父の話を?」
父は不器用だが真面目な人だ。国王はそんな父の誠実さを評価してくれているのだろうか。
自分のことのようにうれしくなる。
「だから俺に遠慮しなくていい。困ったことがあったら何でも相談してくれ」
(そういうことだったのね)
何度か感じた氷の王弟らしからぬ気遣いは、父の縁によるものだったのだ。
「ありがとうございます」
メレディスが笑顔を見せると、カイエンはさりげなく視線を逸らした。
沈黙が訪れメレディスが少し気まずさを感じたとき、カイエンが再び口を開いた。
「具合が悪そうだが、どこか悪いのか?」
メレディスの心臓がドクンと音を立てた。
「いえ……旅の疲れが出たのかもしれません」
メレディスは酷く緊張しながら、慎重に答えた。
カイエンの親切には感謝しているが、不治の病に罹っているとは知られたくない。
彼はメレディスの言い訳を信じたのか、元々大して関心がなかったのか、それ以上は何も言わなかった。
「護衛の為に騎士を数人残していく」
「いえ、そんなご迷惑はかけられません。オスカーもいますので大丈夫です」
メレディスは慌てて、彼を止めようとした。
「用心に越したことはない。我が領地にカロッサ公女を招いた以上責任がある。これは決定事項なので受け入れるように」
カイエンの声音は冷ややかで、逆らうことなでできない鋭さがあった。
「……分かりました」
カイエンは数人の騎士を残し屋敷を去って行く。メレディスは彼の後ろ姿が見えなくなるまで見送った。