妹に陥れられ追放された令嬢ですが、氷の王弟に息子ともども溺愛されています

『大丈夫。手当してあげるね』

 彼女は白いハンカチを取り出して、膝の傷を覆い縛ろうとする。不器用ながらも懸命な表情だ。カイエンの心は騒めいた。

 他人が、自分の為に何かしてくれるのは初めてだから。

『この前執事から、手当の仕方教えて貰ったの……できた!』

 メレディスが満足そうに微笑む。

『あっ! 手も怪我してる。ハンカチもうないのにどうしよう』

 おろおろするメレディスに、カイエンは『平気』と呟いた。

 体に打撲や擦り傷ができるのは慣れている。痛くて辛いのは心の方だ。

 けれど今は、少し痛みが和らいだ気がする。

『そうだ。あなたのお名前は?』
『……カイ』
『カイ?』

 メレディスが首を傾げた。何か考えている幼い横顔にカイエンはつい見惚れていた。

『あ、今日誕生日の王子様と似た名前だね!』

 彼女は両手をぱんと合わせて顔を輝かす。その言葉にカイエンは少し驚いた。

(王子様って僕のこと?)

『お父様が言っていたの。でもお誕生会は開かないんだって。どうしてなのかな?』

 メレディスが不思議そうに首を傾げる。

『……その王子が嫌われてるからだよ』

 カイエンはそう答えて膝に顔を埋めた。自分を愛してくれる人など、この世にひとりもいない。誕生日なんてない方がましだ。

『そんなことないよ!』

 しかしメレディスは声を高くした。

『どうして分かるの?』
『お母様が言っていたの。自分を愛してくれる人は必ずいるって。今寂しくてもいつか必ず会えるんだって』
『そんなの……嘘だよ。だって王子は誕生日でもひとりぼっちだ』
『それなら私がお祝いしてあげる。王子様はどこにいるか知ってる?』

 カイエンは目を見開いた。
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