妹に陥れられ追放された令嬢ですが、氷の王弟に息子ともども溺愛されています
ところが、ある日を境にメレディスを王宮で見かけなくなった。
彼女になにかあったのだろうか。
心配だが何もできずに悩んでいたある日、カイエンが暮らす寂れた宮殿に武術と学問の教師が送られてきた。
父王の手配だったが、後にカロッサ公爵の提言があったと知らされた。
おそらくカイエンと娘の交流に気づいた公爵が、カイエンの境遇を不憫に感じ提言してくれたのだろう。
メレディスが王宮に来なくなったのも、きっと公爵の指示だ。
激しく落胆したが、カイエンはようやく得た成長の機会を逃さず、懸命に自分を高めるために努力した。
いつか王子として認められたら、堂々とメレディスに会えるはずだから。
カイエンはどの分野でも優秀な成績を収めたが、とくに剣術に才能があり、十三歳で騎士団に入団した。
騎士団で実践を経験するうちに頭角を現し、十五歳になる頃には誰も無視できない存在になった。
ちょうどその頃、北の国境で隣国との抗争が始まった。カイエンは父王の命令で、指揮官として戦場に向かうことになった。
過酷な前線に身を投じることに恐怖はあった。
けれど、国を守ることはメレディスを守ることに繋がる。
功績を挙げたら、彼女に相応しいと認められるかもしれない。
(必ず勝利を挙げて帰還する)
カイエンは懸命に戦った。何度も死に直面しながらも必死に生き抜いた。
四年後、勝利を掲げて王都に無事帰還し、国王からキースリング辺境泊の地位を賜ることに。ついに実権のない王子から、広大な領土と騎士団を有する辺境伯になったのだ。カイエンは、十九歳になっていた。
ようやく自信をもってメレディスに会いに行けると希望を持ったそのとき、彼女とカイエンの兄の息子であるマティアス王太子の婚約が発表された。
それは、カイエンにとって胸を貫かれるような衝撃だった。
(嘘だ……)
それなら、自分は何のために、これまで生きてきたのだろう。
どうしても認めたくない。
しかし王太子と王宮のバルコニーに並ぶメレディスの輝く笑顔を見たら、何も言えなくなった。
彼女の幸せを壊すわけにはいかない。
カイエンは、メレディスに会わずに王都を発ち北に向かった。