妹に陥れられ追放された令嬢ですが、氷の王弟に息子ともども溺愛されています
「カイエン様、おかえりなさいませ」
高台に建つ城に戻ると、待ち構えていた側近のベルトが近づいてきた。
「捕らえた野盗は牢に繋ぎました」
「ああ」
「応接室に隣国からの使者を待たせております。それから……」
ベルトの報告を聞きながら、足早に執務室に向かう。
極力無駄を排除した殺風景な執務室では、数人の部下が忙しく働いていた。
カイエンはその様子を横目に最奥にある執務机に着席し、休む間もなくベルトに指示を出した。
「カロッサ公爵家のメレディス公女について、ここ数年の動向を至急調べろ」
「本日、薔薇邸に入られたと聞いていますが」
メレディスには言わなかったが、彼女が入居したのはキースリングで最も美しいとされる屋敷だ。そのため大層な名前がついている。
メレディスとの出会いを思い出して、選んだ屋敷だ。
「そうだ。彼女が不自由しないように丁重にもてなしたい。しっかり手配してくれ」
「かしこまりました。調査も合わせて進めます」
「ああ。とくに病歴については、見逃すな」
カイエンはメレディスの顔色が悪く、何度かふらついていたことが気になっていた。
襲撃で動揺していただけとは思えない。なにか大きな病気に罹っているような気がするのだ。本人にそれとなく聞いたが、答えてもらえなかった。
「もしなにかの病を患っているのなら、最高の医師を用意する必要がある。国外も含めて探してくれ。くれぐれも彼女には気づかれないように」
メレディスが隠したがっているのなら、その気持ちを尊重したい。かといって見過ごすことなどできるはずがない。
彼女は、幼い頃のカイエンの心を温かくしてくれた、かけがえのない人なのだから。
「ご指示通り対処いたします。別件ですが西の辺境伯から会談の申し込みがありました。今回は西の領地に招待したいとのことです。いかがなさいますか?」
エーレン王国には東西南北四つの辺境伯家があり、定期的に交流を持ち情報交換をしている。自領に有益な商売に発展する場合もあるため、カイエンはこの交流を重視し優先していた。
ベルトは当然、招待に応じると思っているようだが、カイエンは迷わず拒否をした。
「今は都合が悪い。会談は冬を越してからだ」
カイエンはそれ以上の説明はせずに、書類に目を通し始める。
常にキースリング領都の発展を第一としてきたカイエンらしくない判断だ。
ベルトは戸惑いの表情を浮かべながらも、主君の指示に忠実に従った。