妹に陥れられ追放された令嬢ですが、氷の王弟に息子ともども溺愛されています
(苦しんでいるメレディスを支えるどころか突き放すとは……)
メレディスの幸せを願いマティアスとの仲を見守っていたのに。こんな結果になるなら、心のままに婚約を反対するべきだった。
それにカロッサ公爵は一体何を考えているのだろうか。
僅かな供しか与えず、寂れたリントン村に追放するなど、まるでメレディスを見捨てたようだ。
カイエンはきつく手を握り締めて、掠れた声を絞り出した。
「根治の見込みは?」
「異形症に治療方法はありません。ですが……」
ダリエ医師が、口ごもった。
「なにか気になることがあるのか?」
「実は診断に迷いがあるため、更に詳細な検査をさせて頂きたいと思っています」
「どういうことだ?」
カイエンは逸る気持ちで先を促す。
「カロッサ公女の症状はたしかに異形症に間違いないのですが、ひとつ気になる点があるのです」
「それは?」
「これまでの異形症の患者は、温かい食べ物や飲み物を嫌うようになると報告されています。しかし私が薔薇園を訪れたとき、公女は温められたハーブティーを美味しそうに飲んでいました」
「つまり異形症ではない可能性があるということか?」
カイエンの胸に、僅かな期待が生まれた。
「断定はできないということです。ただ症例として報告がなかっただけかもしれません。異形症の患者数は非常に少ないため、まだ判明していない部分が多いのです」
「分かった。君が主治医となり引き続き彼女を診てくれ。専属となり他の仕事はしなくていい」
「かしこまりました」
「下がっていい」
ベルトとダリエ医師が退室すると、カイエンはたまらず頭を抱えた。
メレディスが不治の病に罹っているなんて信じたくない。
そんな状況でありながら、家族と婚約者にもろくに支えて貰えなかったなんて、どれほど辛かったのだろう。
(……それなら俺が支える)
かつてカイエンが辛かったときにメレディスが寄り添ってくれたように。
何としてでも彼女を治す方法を見つけ出し、昔のような輝く笑顔を取り戻したい。
カイエンは固く決心したのであった。