妹に陥れられ追放された令嬢ですが、氷の王弟に息子ともども溺愛されています
四章 薔薇邸での日々
 キースリング辺境伯領に移住してひと月が経った。

 メレディスは新しい環境にも慣れ、日々穏やかに暮らしている。
 
 縁がない土地での暮らしに初めは不安もあったけれど、カイエンが驚くくらいまめに顔をだし、何かと世話を焼いてくれる。

 後から知ったが、彼が用意してくれたのは薔薇邸と呼ばれる、有名な屋敷だった。

 場所柄キースリング領都では美しい花を栽培し辛いが、薔薇邸には温室があり、季節を問わず華やかな景色を楽しむことができる。

 午前中は庭園を散歩して、昼食後は温室でお茶を飲みながら読書するのが、最近のメレディスの日課になっている。

 王太子の婚約者だった頃は、日々勉強か公務に勤しむ生活だった。多忙な日々が、ずいぶんと昔のことに感じるので、比べ物にならないくらいのんびりした毎日を送っていた。

「お嬢様、お茶が入りました。今日はカイエン殿下が贈って下さった隣国の茶を使っています。独特の香りですがお嬢様の好みだと思います」

 温室に用意したテーブルに、レオナがお茶と洋菓子を手早く並べたる。

 薔薇邸にはカイエンが手配した料理人が常駐し、メレディスの希望に応じていつでも美味しい料理やお菓子を提供してくれる。

 公爵家で暮らしているときよりも、至れり尽くせりでメレディスは申し訳なさを感じてしまうが、レオナは非常に満足しており生き生きとしている。

「ありがとう。レオナも一緒に飲みましょう」
「はい」

 通常侍女が主人と同席することはないが、メレディスとレオナは乳兄弟なことから、気安い関係だ。で貴重な話し相手でもある。

 北部特有の重いスポンジでできたケーキを食べながらお茶を楽しみ、他愛ないおしゃべりに興じる。そうしていると婚約解消や家族の冷たさなどで傷ついた心が癒されていくようだ。

 最近は体調を崩すことが減ったため、病の不安を考えずにいられる。

「それにしてもカイエン殿下は素晴らしい方ですね。お嬢様の為に心を尽くして下さって……鬼神とか冷酷とか噂されていたのは、誰かが妬んで悪く言ったのが広まったのかもしれませんね噂されてたけ[Y43.1]大嘘でしたね」

 レオナはメレディスに手厚い庇護をしてくれるカイエンを、すっかり好きになったようだ。

 怖がっていたのが嘘のように、今はカイエンを賞賛している。
< 35 / 76 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop