妹に陥れられ追放された令嬢ですが、氷の王弟に息子ともども溺愛されています
「お嬢様の病気は治るかもしれません。ダリエ医師はとても優秀ですし、実際キースリング領都に来てから、お嬢様の体調は以前よりもよくなっています」
「でも……」
レオナが言う通り、移住してから、体調が向上している。以前のように手足がしびれることが無くなったし、目眩で動けなくなることもない。
ただ異形症から回復した者はこれまでいない。
「本当に治るならうれしいけど、あまり期待したくないの」
期待してしまったら、だめだとわかったときの失望に耐えられそうにない。
メレディスは残りの人生を穏やかに過ごそうと、覚悟を決めて公爵邸を出た。
権力も地位も要らない。たとえ心穏やかでいられたらいいと。
母が残したリントン村で住民たちに奉仕して過ごしたいとできればいいと考えていた。
(それなのに……私は欲張りになっている)
全てを諦めて凪いでいた心が騒めいている。
「メレディス様、ダリエ医師が往診にいらっしゃいました」
「今行きます」
侍女の呼びかけに、メレディスは思考を止めて席を立った。
「ダリエ先生、お待たせして申し訳ありません」
メレディスが屋敷に戻ると、応接室で待っていたダリエが笑顔で迎えてくれた。
「メレディス様、今日は顔色がとてもいいですね」
「ええ、薬が効いているのか、毎日気分がいいんです」
「薬が体に合っているようですね」
「先生のおかげです」
メレディスは心からそう思っている。
ダリエは移住してからレオナが探してきてくれた信頼できる医師だ。[Y45.1]幼い頃から見守ってくれていた公爵家の侍医ほどの腕は期待していなかったが、彼女は想像していた以上に優秀で、メレディスに合う薬を処方してくれる。
おかげで、ここひと月体の麻痺で悩むことはなくなった。
このまま病が進行せずに無事に過ごせたら……そんな期待を持ってしまう瞬間もある。
また彼女は人柄もよくメレディスの話し相手になってくれるから、つい口数が多くなる。
「こんなに調子がいいと、家でじっとしているのがもったいないと感じてしまいます」
「メレディス様は仕事がしたいとお考えですか?」
「ええ。元々リントン村に住んで村の環境をよくするために働きたいと考えていたんです。でもこちらに来ることになったので、何をしたらいいのか……」
「そうですね……では、辺境伯様に相談してはいかがでしょうか?」
メレディスの話を聞いたダリエは、少し考えてから思いついたように言った。