妹に陥れられ追放された令嬢ですが、氷の王弟に息子ともども溺愛されています
◇◇
「辺境伯閣下、メレディス様に例の薬をお渡ししました」
カイエンの執務室にダリエが定期報告にやって来ると、彼はすぐに人払いをした。
最側近のベルトだけを残して、部下たちが素早く部屋を出て行く。
扉が閉まると、カイエンは口を開いた。
「メレディスの様子はどうだった?」
「……健やかにお過ごしです」
ダリエが沈黙の後に淡々と言った。聞かなくても知っているだろとでも言いたいのだろうか。少し不服そうな表情だ。
確かにカイエンほどメレディスを気遣っている者はいない。常に彼女のことを考えているし、薔薇邸に連日足を運んでいる。自分のもつ全ての力を彼女の為に注いでいると言ってもいい。
それでも些細な情報すら見逃したくないのだ。
カイエンは構わず話を続ける。
「彼女はまだ気づいていないな?」
「はい。余計なことを言って不安を与えるのはよくありません。確証が得られるまでは本人に伝えない方がいいと思います」
「ああ」
このひと月、ダリエはメレディスの治療を続けて、ある仮定を打ち出した。
メレディスの病は、異形症ではないのではないか。
もしかしたらダリエは、症状が似た病があるのかもしれない。本人に気づかれないように検査を繰り返し、様々な文献を調べ、他国の最新の情報を収集し続けた。
その結果、他国に異形症と非常に似た症状を起こす毒が存在していることを突き止めた。
かつて王位継承争いの際に使われたものだ。全て廃棄されたはずだが、何者かによってまた作られ、蘇り[Y46.1]メレディスに使われた可能性がある。
カイエンはその報告を聞くなり、解毒薬を手に入れるため、多くの部下を他国に送り出した。
そして苦労の末にして製法を知る者を強引に連れ帰り、不眠不休で解毒薬を作り出だした。
今日メレディスに渡した薬は、実は解毒薬だったのだ。
これまでは症状を緩和するための薬だったが、今日から根本を治療するための薬に変わる。