妹に陥れられ追放された令嬢ですが、氷の王弟に息子ともども溺愛されています

◇◇

 エーレン王国王宮の一室に、女性の金切り声が響いていた。

「どうして私がこんな目に遭わなくてはいけないの!」

 ガシャンと音を立てて、高価なカップが粉々に割れる。

「ベルティ落ち着いてくれ。大丈夫だから」

 金髪に碧眼の、いかにも育ちの良さそうな男性が、慌てて宥めに入る。

 エーレン王国王太子マティアスだ。彼は柔和な顔を曇らせ、ため息を零した。

「教師は君のためを思って厳しい言葉を使うんだ。君に立派な王太子妃になってもらいたいからなんだよ。悪気はない。ただ愛国心に溢れた人たちなんだ」

 ベルティの目が信じられないといったように大きく開く。

「今の私では立派な王太子妃になれないとおっしゃるの? マティアス様はそのままの私を愛していると言っていたじゃない! 頭が固くてつまらないお姉さまよりもずっと愛らしいと言ってくれたじゃない! 嘘だったの?」

 ベルティの瞳から大粒の涙が零れ落ちる。

 マティアスはおろおろおとしながら、絹のハンカチを取り出し彼女の涙を必死に拭った。

「そんなことは言ってないよ。ただもう少しだけ頑張ってほしいんだ。そうでないと君を認めて貰えなくなる」
「認めないって王太后様が言ってるだけでしょ? あの方は私のことが嫌いなのよ。だから意地悪しているの!」
「そんなことはない。お祖母様は国のことを思っているんだ。王太子妃はとても重要な地位だからね」

 マティアスはベルティを必死に宥めようとするが、彼女は聞く耳を持たずより一層怒りを燃え上がらせてしまった。

「マティアス様はどうしてお祖父母様のいいなりなの? 反対されたって私を認めるように話してくれたらいいのに」
 マティアスは瞳を暗くした。
「それは無理だ。お祖母様に物申せるのは父上だけなんだ。でも父上もベルティに関してはお祖母様と同じ意見だ。君にはもう少し努力してほしいって」
「国王陛下も私が駄目だと思っているの?」

 マティアスは答えなかったが、無言なのが肯定を示している。

 ベルティの顔が屈辱で赤く染まった。
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