妹に陥れられ追放された令嬢ですが、氷の王弟に息子ともども溺愛されています

「なんと見苦しい態度だ」

 王太后は侍女に合図を送り、割れたカップを片付けさせてから椅子に腰を下ろした。

 どこまでも冷たい眼差しを、マティアスに向ける。

「このような娘を妃に望むとは、お前はまるで見る目がないな」

 その瞬間、ベルティの頬が真っ赤に染まった。怒りで気が遠くなりそうだ。

「お言葉ですが!」

 声を上げて反論しようとすると、マティアスが慌ててベルティの口を手で覆った。

「お祖母様、ご無礼申し訳ございません。ベルティは急に婚約者になったため、まだ妃教育が進んでいないのです。どうか広い心でお許しください」

 マティアスのとりなしを、王太后は鼻で笑って退ける。

「貴族令嬢としての作法も礼節も身に付いていないではないか。気に要らないことがあるたびに癇癪を起し騒ぎ立てる。品性の欠片もない。下賤な生まれは隠せないな」

 出生については、ベルティにとって弱みであり逆鱗だった。怒りに体を震わすベルティをマティアスが必死に抑えつける。

「お祖母様、ベルティはれっきとした公爵令嬢です」
「平民の妾の娘だろう。マティアス、その娘と婚約破棄をしてリード侯爵家の令嬢を妃に迎えなさい。彼女の母親は公爵家の出身で血筋が確かだ。王家に入るに相応しい」
「リード侯爵令嬢ですか? しかし私はベルティと婚約している身です。二度の婚約破棄となってはカロッサ公爵家に申し訳が立ちません」

 ベルティの胸中は荒れ狂っていた。

 リード侯爵の令嬢は、メレディスと親しくしていた気取った女で、ベルティにとって、姉の次に気に入らない存在だ。

 しかしベルティが怒っているのは、それだけが原因ではなかった。

 マティアスはさっきからベルティを抑えつけるだけで、少しも庇ってくれていない。

 婚約者の為に声を上げて、王太后の暴言を批難しようともしない。それどころか、新たな婚約を検討している節がある。

 王太后の言いなりで、ただ大人しく頭を下げて嵐が過ぎるのを待つだけだ。

 煌びやかな王子が急に色あせて見えた。

 ベルティはついに涙をこぼした。

 何もかもが上手くいかない。

(お姉様のせいよ。お姉様と比べられるから私をよく見てもらえない……いなくなったのにいつまでも私を苦しめる)

 メレディスが憎くて仕方がない。

(早く毒が回って死ねばいいのに)

 ベルティの心が恨みに締められていく。唇を噛み締めて遠い地にいる姉を呪った。

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