妹に陥れられ追放された令嬢ですが、氷の王弟に息子ともども溺愛されています

「薔薇が好きなのは魔力は関係なく、大切な思い出があるからなんだ」
「大切な思い出?」
「ああ。幼い頃、俺にとって薔薇園はとても大切な場所だった」

 その瞬間、メレディスの脳裏に赤い薔薇が咲く風景が思い浮かんだ。

 どこで見た風景なのかは分からない。それなのに懐かしい気がする。

「メレディス、どうしたんだ?」
「いえ、ただどこかで薔薇を見たことを思い出して」

 カイエンが僅かに目を瞠る。彼の腕に力が入る。

「……思い出せたのか?」
「いえ。王都の薔薇園とは違うみたいで。かといって他に私が行ったことがある薔薇園はないし……」

 やはり自分の勘違いだろう。それにしても気になる。

 不思議な感覚に戸惑っていると、カイエンは白雪花草を一輪摘んだ。

「綺麗な花だ。メレディスが大切に育てているのだろう?」

 カイエンには何でもお見通しだ。

「大切にするよ」

 彼はお世辞でもなく本当に大切そうに花を見つめた。

「メレディスはもう休む時間だな。俺もこれで失礼する」

 カイエンは時間を確認すると、メレディスを促して温室を出た。

「もうこんな時間だったんですね」

 楽しい時間は過ぎるのが早い。

「レオナに聞いたけど新しい薬を飲んでいるそうだなん。だろう? 体調はどうだ?」

 メレディスは顔を輝かせた。

「薬がとても合っているみたいで、今までで一番調子がいいんです。庭を何週も走れるくらいに」

 驚くくらい、薬がメレディスの体質に合った。

 本当に病が治るのではないかと、現実的な期待を覚えるくらいに。
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