妹に陥れられ追放された令嬢ですが、氷の王弟に息子ともども溺愛されています

「順調です。他国も含め美しい花を集め、有能な庭師を雇いました。薔薇園にも劣らない素晴らしい温室が出来上がるでしょう」
「そうか」

 カイエンは機嫌よく口角を上げた。

 いつも厳しい主君だが、最近はよく笑う。ベルトは初め恐怖を感じていたが、主君の機嫌の良さが場内にも影響しているのか、使用人たちの顔色が明るい。

 カイエンの怒涛の要求にも、皆が積極的に応え女主人の誕生を待ちわびているのだ。

「至急乳母を探してくれ。身元が確かで優秀で穏やかな者がいい」
「かしこまりました。急ぎ手配いたします」
「メレのための騎士団をつくる。オスカーが団長だ。他は俺が自ら選抜する」

 カイエンが次々指示を飛ばしていると、ノックの音がした。

「閣下、急ぎの報告がございます」

 続いて若い男性の声がした。

「入れ」

 ベルトが答えると、騎士が静かに入室してカイエンの前で頭を下げた。

「整備中のリントン村に続く街道で、不審な動きをしている者を発見しました。旅の傭兵だと名乗っていますが、調べたところカロッサ公爵家の紋章入りの手紙を持っていたため、現在は騎士団の詰め所で足止めをしています」

 キースリングの騎士たちは皆、カイエンがカロッサ公爵令嬢を妻に娶ると知っている。そのため、不審な相手でも無下に扱うことが出来ず、カイエンの指示を仰ぎに来たのだろう。

「分かった。俺が直接話そう」

 カイエンはすぐさま執務室を出て、詰め所に向かった。

 足止めされていた傭兵の男は、カイエンが現れるとあからさまに警戒した。

「あんたは?」
「カイエン・キースリング。辺境伯だ」

 カイエンは答えながら、男を観察する。

 年齢は三十代後半。小柄ながらも鍛えられた体つきで、傭兵としての経験が豊富なのが察せられる。しかし公爵家に所属する騎士のように洗練はされていない。
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