妹に陥れられ追放された令嬢ですが、氷の王弟に息子ともども溺愛されています
「こちらです」
カイエンは手紙を冷めた目で見遣った。なんの変哲もない白い封筒だが、よく見るとカロッサ公爵家の紋章が透けて見える。
貴族は重要な伝達に関して、各家で用意した特別な封筒を使用する。偽物ではないと証明するためだ。
非常に高価なものなので、なぜ傭兵への伝達に使用しているのかは謎だが、封筒自体は間違いなく本物だった。
カイエンは手紙を取り出して目を通した。
【例のものを追加で手配したい。三日後までに用意出来れば金貨百枚を出す。もし更に効果が高いものが手に入るのなら金貨二百枚を出す】
宛先も送り主もなく、内容も何かの取引としか分からない。しかいカイエンはたちまち顔色を変えた。
「この手紙は誰から受け取った?」
男の表情が一瞬強張る。
「知るか。仕事で運んでいるだけだ。余計な詮索しないのが条件だった」
「本当か?」
カイエンは剣帯から剣を抜き放ち、風のように素早く男に突きつけた。
「正直に答えなければここから出られない。嘘を吐いたら命の補償はできないぞ」
男の頬から血が流れ落ちる。カイエンが放つ威圧感は、味方の騎士も身動きが取れなくなるほどで、男は蒼白になった。
「お、俺を殺したらカロッサ公爵家が黙っていない。公爵家だぞ? あそこの令嬢は王太子の……」
「だからなんだ? 俺が手を出せないとでも?」
苦し紛れの言葉は、カイエンの冷笑で遮られた。
「これは毒を依頼する手紙だな?」
カイエンが断言すると、男が息を飲んだ。
「……知らないって言っただろ?」
「お前は知らなくても俺は分かる。この毒はメレディスを狙ったものだ。依頼主は公爵の娘ベルティといったところか。公爵本人ではあり得ない」
男の顔色がますます悪くなった。
カイエンは酷薄に笑った。
「なぜ分かるのかって? 正式な手紙を使い毒の依頼をするなんて馬鹿な真似を、公爵がするはずがない。この手紙の送り主は笑えるくらいの愚か者だ。そしてメレディスに敵対心を持っている」
カイエンは一歩前に踏み出した。
「お前が何も知らなかったとしても、メレディスを害する可能性がある者は誰一人として許さない。解放されると思うな……知っていることを全て吐かせろ。どんな手段を使っても構わない」
カイエンは男を震え上がらせてから騎士に指示を出して、詰め所を去った。
あの男はおそらくたいした情報を持っていない。しかしベルティの動きが活発になっているのは確かだ。
カイエンは冷たい目で考えを纏めると、急ぎ城に向かった。