妹に陥れられ追放された令嬢ですが、氷の王弟に息子ともども溺愛されています
◇◇
「お姉さまが帰ってきた?」
王宮の一室で、側近の侍女から報告を受けたベルティは、驚愕して叫んだ。
侍女は主人が激怒する様子に身を小さくしながら言葉を続ける。
「本日の昼過ぎに、キースリング辺境伯所有の屋敷に到着したとのことです」
「お姉さまは、ひとりで戻ったの?」
「辺境伯様とキースリングの騎士団に守られてのお戻りとのことです」
ベルティは苛立ちのあまり歯を食いしばった。
(最強と名高いキースリングの騎士団が、お姉さまを守っているなんて)
「なんのために戻ってきたのか調べたの?」
「国王陛下から召喚命令が出たようです」
「どうして? 陛下がお姉さまに何の用があるの?」
ベルティの心に焦燥感が広がっていく。
国王は王太子の婚約者であるベルティを無視して、会おうともしない。
それなのに、なぜ姉とは会おうとするのだろうか。
「詳細は不明です。ですが……メレディス様は身ごもっておられるようです」
「……は? お姉さまは妊娠しているというの?」
ベルティはかっとして、手にしていた扇を床に叩きつけた。
(どうして、あの女ばかりが幸せになるの?)
ずっと嫌いだった姉から苦労して王太子の婚約者の座を奪い、王都から追放した。
ようやく長年の恨みを晴らしたつもりだった。
気取った偽善者が辺境で惨めに朽ちていくのを楽しみにしていたのだ。それなのに――。
姉は惨めに落ちぶれるどころか、輝きを増して帰ってきた。
王族の妻になり、早くも跡継ぎを身ごもり、最強の騎士に守られている。
それに比べて自分はどうだろう。
優越感に浸っていられたのは、ほんのひとときだった。
王太子の婚約者になったというのに、何も思い通りにならない。
王太后も国王もベルティが王太子妃に相応しくないといい、婚約を解消しようとしている。
最近はマティアスまでもが、ベルティを避けるようになり、王太后のお気に入りであるリード侯爵令嬢に興味を持っている。
ベルティはマティアスの寵愛だけを頼みに、婚約者の地位に就いた。