妹に陥れられ追放された令嬢ですが、氷の王弟に息子ともども溺愛されています

 ◇◇ 

 翌日。カイエンは朝一番で王宮からの呼び出しを受けて、屋敷を出た。正式な謁見は数日後に予定されているが、国王が内々に話したいことがあるらしい。

 メレディスは屋敷に残り、カイエンの帰りを待ち、彼が戻ってから買い物の出かける予定だ。

 空いた時間は、レオナと共に庭園を散歩することにした。

「ここにも温室が欲しいですね」

 レオナがどこか殺風景な庭を見回して言う。

「でもあまり立ち寄らないのに、贅沢するのも気が引けるわ」
「そんなことないですよ。住まなくても完璧に整えるのが高位貴族。特にキースリング辺境伯は国でも五指に入るお金持ちなんですから。カイエン殿下はお嬢様のためなら何も惜しみませんよ」

 たしかにカイエンはメレディスにとことん甘い。だからこそしっかりと監視している必要があるのだ。

 庭を一蹴して玄関前の噴水に戻ったとき、屋敷が騒がしくなっていることに気が付いた。

「なにかしら?」

 レオナと目を合わせていると、執事が慌てた様子で近づいてきた。

「奥様、こちらにいらっしゃいましたか」
「なにかあったの?」
「カロッサ公爵家のベルティ様が先触れなくいらっしゃいました」
「ベルティが?」

 メレディスは氷を飲み込んだように、体が冷えていくのを感じた。

(どうして彼女が?)

 メレディスにとって一番会いたくない相手だ。王都に滞在しても避けて顔を合わせないつもりだったのに。

 しかし妹とはいえ王太子の婚約者。ここまで来られてしまっては、追い返す訳にはいかないだろう。

「分かりました。応接間に案内して。すぐに行きます」

 メレディスはレオナにオスカーを呼ぶように告げると、いったん寝室に戻り小さな手鏡を取り出した。これは映像を記憶する魔道具で、カイエンから与えられたものだ。用心する必要があるときに使うようにと。

 メレディスは手鏡を手の中に隠して、応接間に急いだ。入口でオスカーと合流して、部屋に入る。

 部屋の中央のソファには、豪華な薔薇色のドレスに身を包んだベルティが、不機嫌さをまき散らしながら座っていた。テーブルの上には飲みかけのカップが置いてある。
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