まことしやかな恋

 立場が一変して、鞍馬 大和は追い詰める側から追い詰められる側へ。劣勢になった彼は憎々しげに舌打ちをした。私を睥睨し、鋭い眼光で射抜く。

 いつも、暴力で押し通してきたのだろう。残念なことに、狡猾で卑怯な大人の前では力一辺倒など役に立たない。

 今の彼は無力だ。


「私の連絡先消してもらえますか?」

「拒否権ねぇだろ」

「度を超える嫌がらせもやめてください」

「……もう、しねぇよ」


 諌める言葉に、彼は消え入る声で頷きを返す。

 その姿に、既視感があった。つまらなそうな表情ばかりしていたのは、寄る辺ない孤独を見せまいとする強がりだったのかもしれない。嗣海もよく笑顔で誤魔化していた。

 行き場のない稚さを見せる鞍馬 大和をこれ以上いじめたら、私の方が悪人みたいだ。

 スマホを操作しながら三歩近寄り、彼は私をブロックした画面を見せてくる。倣うように、私も彼をブロックした。


「私のようなクソ性格の悪い大人もいます。戦う方法を覚えましょう」

「……」

「むしゃくしゃしたら、保健室に逃げてきてもいいです」

「アンタ、バカじゃねぇの……」


 癖のない黒髪に指を通し、くしゃりと撫でてあげると、悪態づいてばかりだった彼はちんまり小さくなった。

 ガラ悪くしゃがみ込んだ鞍馬 大和は、ため息を零しながら首元を手で押さえる。

 淡いハートマークが居心地悪そうに、彼の首に居座っていた。
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