まことしやかな恋


「……これ、一生消えねぇのかな」


 独り言のように、彼は呟く。

 ハプニングとはいえ、私の不注意で、彼はまことしやかな運命の跡を首に刻まれているのだ。しかも運命は一方通行で、消し方もわからない。そりゃあ、途方に暮れるだろう。


「……マジで、アンタには、ハートマーク浮き出てないの?」


 頭を撫でられたまま心細く問いかけてくる彼は、運命に翻弄される仲間を求めているようだった。

 前は「ありません」と答えたが、孤独に苛まれている人間に、嘘はつけない。沈黙も、誠実じゃない気がした。


「すみません。嘘をつきました。君と同じハートマーク身体にあります。けど、相手は君じゃありません」

「…………性格の悪い、恋人?」

「そうです」

「アイツには、あんの?」

「知りません」

「ハァ? なんでだよ!」


 無防備に頭を撫でられていた鞍馬 大和が、勢いよく顔を上げて突っ込んできた。そんなに驚かなくてもいいのでは。


「アイツも知らねぇの?」

「いえ、あっちは知ってますよ。人の寝込みを襲って確認してやがりました」

「クソじゃん」

「大嫌いと言って腹を蹴りました」

「ザマーミロ」


 悪ガキらしさを取り戻した鞍馬 大和は警戒心が皆無になったようで、「なんで撫でんのやめんの?」と不思議そうに文句を言ってくる。

 さながら、頭を撫でろと要求をしてくる犬だ。

 ぐい〜っと私の手のひらに自分の頭を押し付けてくる。
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