まことしやかな恋
˚‧ 𓆸
鞍馬 大和と別れたあと、私は急いでタクシーに飛び乗った。行き先を告げて、最短ルートで向かうよう運転手にお願いする。
誤差の範囲だとわかっていても理性が効かない。少し時間を巻き戻せば、友達で居られるかどうかでウダウダ悩んでいた自分がいるのに、今は未成年を脅すほど、どうしようもなく腐れ縁の性悪に焦がれているのだから、私の人生は面白い。
暇潰しの人生で、雨宮 嗣海に出会ったこと。
運命だとは思いたくない。でも幸福な出来事だったと信じている。
「(もし、すべてひっくるめて、運命だというのならば……)」
降参した笑みが、窓に反射する。
過ぎ去る景色を車窓から眺めつつ、私は手元にあるピアスの入ったショッパーを大切に抱いた。
────【 BAR Polaris 】
お釣りをもらう時間すら惜しく、タクシーを飛び降りてすぐ、見慣れたバーのドアを勢い任せに開けた。
鈴の音が、弾けるように鳴り響く。
「いらっしゃい」
見知った常連だらけのバーで、いつものようにマスターが微笑み、視線をカウンターに座る人物へと滑らせた。
「……」
此方に見向きもせず、なに食わぬ顔でお酒を飲んでいる嗣海の方へ、ゆっくりと歩いていく。
マスターはほのぼのとした笑みのまま。常連たちはただならぬ空気に常連たちは固唾を呑んで見守っている。
逃げた男の傍で、足を止めた。