まことしやかな恋
両頬を手で包んでおでこをくっつけると、臆病な男は安心したように目を閉じて、私の腰に腕を巻き付ける。ぎゅう、と麗しい顔をお腹に埋めてきた。
腰にしがみついたまま、顔を上げられない姿に可愛いと口元が緩む。
背後で「ヒュウ!」だの「祝い酒だ〜」だの喧しい声がするが、恥ずかしいので聞こえないふりをした。
「プロポーズは狡いよ……」
「イエス?」
「それ以外に返事があると思う?」
「尽くすの好きなんでしょ。言葉も尽くして」
「結婚したいです」
食い気味な返事に、思わず笑う。
完璧を気取る男は情けない姿を常連客に見られたのが恥ずかしいのか、か細い声量だ。ぐりぐりとお腹にめり込んできて、少し痛い。
誰よりも近くで一連の流れを見ているマスターには聞こえてしまっているだろうなと一瞥すると、にっこりと微笑まれた。
「ふふ、連絡は役に立ったかな?」
「……はい、ありがとうございました」
妖艶な空気を纏って、こてんと首を傾けたマスターには今後も頭が上がらない。
鞍馬 大和と別れたあと、私はマスターから連絡を貰っていた。〈君の性悪くんは保護したよ、迎えにおいで〉と。
だから、指輪を買えた。一日で二度もジュエリーショップに行く羽目になるとは思っていなかったけど、終わりよければすべてよしだ。
「特等席でいいもの見せてもらったから、貸しはなしにしてあげるね」
「……どうも」
私と嗣海、二人に向けた言葉。
無反応を貫く嗣海が、さらにお腹に埋まった。