まことしやかな恋
今夜は飲むぞ〜! とうるさい常連たちは完全に私たちをエンタメとして見ている。
そりゃそうだ。売り言葉に買い言葉でキスをした男女が、恋人になって公開プロポーズをしてる状況に遭遇したら、私でもエンタメとして消費するし揶揄う。
「お祝いにシャンパン開けようかな」
「「……」」
マスターの言葉に、私たちは無言を返した。
婉曲的に、シャンパンを開けろと言っている。自分のバーで二度も好き勝手にしたんだからツケを払って奢れ、という意味に他ならない。
「好きなだけ飲んでいいよ」
かろうじて取り繕える余裕を取り戻した嗣海が、顔を上げて笑顔でマスターに告げた。
タコのようにお腹に巻きついていた腕は離れ、代わりに指先をカウンターの下で引っ掛けられる。どうにかして触れていたいらしい。
性悪が、急に可愛く見えて困る。
「太っ腹だね。両想いになれて怖いものなしかな」
「マスターって、人の恋路に首突っ込むのが趣味?」
「ふふ、ごめんね。お詫びに、君たちのスパイスになってあげるよ」
食えない者同士の外面だけは和やかな応酬。巻き込まれまいと、私は無関係を徹して恋人のつむじを眺めた。
しかし、微笑を浮かべるマスターが爆弾を落としたことで、空気が一変する。
「葵子ちゃん。俺にベッドに誘われたこと、嗣海くんに話した?」
「…………は?」
はぁ〜〜〜っっ!? なんで今言うの!?!?