まことしやかな恋
金平糖みたいな甘い空気の裏に隠した得体の知れない妖しさに、みんな気付くべきなのに。
誰もがころりと、この男に騙されてしまう。
「もしかして見惚れてる? 照れるね」
カウンターに頬杖をついて、私の横顔を見つめている男は軽々とふざけたことを言い放つ。睨めば、楽しそうに眦を細められた。
相手にするだけ、時間の無駄だ。
「無視されちゃった、悲しいな。……マスター、可哀想な俺に美味しいご飯とお酒くれる?」
「お酒はご飯に合うのでいいかな?」
「うん、なんでもいいよ。俺は優しいからマスターにも一杯飲ませてあげる。お好きなのどうぞ?」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
平凡な掛け合いだが、食えない男同士の本音が見えないやり取りに背筋がそわりとしてしまう。
本心でも嘘でもあるような。どちらにせよ、掴みどころがない。
普段通り、飄々としている男は気まずさなど微塵も感じさせない態度でいる。目撃証人もいるのに、まるで記憶にないと言わんばかり振る舞いだ。
グラスの中の液体が揺蕩う。お喋りな嗣海が静かだなと横目で窺うと、なぜかじぃ〜っと視線の標準を合わせて、私をガン見していた。
「……なに?」
「ん〜、なんでもないよ。気にしなくていいよ」
「視線がうざいからやめて」
「意地悪だなぁ」
堂々と人の腕を持ち上げてまで観察し始めたというのに、嗣海は理由を濁す。表面的な親しみやすさを滲ませて、核心には触れさせないのはいつもの事だ。