まことしやかな恋
それにしても、なにがしたいのか。
「……ねえ、なにしてんの」
するり、人の首筋に手を伸ばしてきた変態を睨んで制止させるも、悪びれない顔で「ちょっとね」なんて曖昧な言葉が返ってくる。
「うなじチェック」
顔の良さでカバーできないドン引き発言に、私は眉をひそめて呆れた。
けれど、意に介さない男は器用にも私の髪を掻き分けて擽るようにうなじを撫でてくる。あまりの変態加減に反射で身を引けば、唇の端を優雅に持ち上げるからイライラゲージが急激に上昇。カウンターの下で足を蹴ってやった。
「俺を傷物にした責任は取ってもらうよ?」
「今日、いつにも増してうざい」
常日頃から喧しい男だけど、今日は妙な行動も含めてうざすぎる。引き際を弁えているくせに、絶対わざとだ。なにが目的……?
よからぬ事を企んでいそうな嗣海に、私は怪訝に眉を寄せた。こういう場面の嗣海は、大抵、ろくでもないことを言い出す。
どうするかな。昨日の二の舞になるのも嫌だ。
嗣海の口八丁を、今日だけは相手したくない。平然を装っているけれど、嗣海と顔を合わせて以降、昨日の失態への後悔も朝の動揺も蘇ってきて、しっかり私にダメージを与えている。