まことしやかな恋

 帰宅後、寝室へ直行されて冷たいベッドの上に押し倒された。

 噎せ返るほどの色気を孕んだ男に見下ろされる。逃げられないように、やんわりと頭上で手首を拘束された。


「嫌がんないの?」

「何で嫌がると思ってるの。好きにしていいよ」


 薄暗い部屋で、ぼやける嗣海の輪郭を掴みながら本心を返せば、神秘的な瞳が神妙に細まる。


「……その台詞は、よくないなぁ」

 
 何故よくないのかと問う間もなく、迂闊だったと反省した。

 嗣海が自身の髪をぞんざいに掻き上げる。目の前にいるのは男だと、本能が言った。ゆるやかな笑みを象った唇が首筋に落ちてくる。


「ん、くすぐった」

「……」

「甘噛み、やめて」


 喉元にやわく歯を立てられ、咄嗟にやめてと口にすれば、潔く体温ごと離れていった。

 でも、熱情が滲む双眸に、聞き入れてくれたわけじゃないと知る。


「好きにしていいんでしょ?」


 その言葉と共に、劇薬のような微笑が降り注いだ。

 暗闇で輝く耳朶の宝石を、扇情的な男がふにふにと引っ張る。喜色を隠さない姿が愛おしい。どうせ酷いことはされないんだから、望むものをすべて与えてしまおう。

 誘うように、小首を傾げてみた。


「ねえ、怒るよ」

「……」

「俺がどれだけ我慢してたか知らないでしょ。いつ抱いてやろうかって、こっちは虎視眈々と狙ってたんだよ? 可愛い顔してないで、ちょっとは俺の忍耐力に感謝すべき」


 もう、怒ってるじゃん。
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