まことしやかな恋
そんな俺の退屈な人生は、羽柴 葵子と出会ったことで一変する。
俺は裕福な家庭が集まる私立の高校の特進クラスに進学し、直接勧誘を受けたこともあって一年の頃から生徒会に所属していた。
特進クラスも、生徒会も、クソみたいな人間の巣窟だ。親の威光でふんぞり返っている。幼少期からの高等教育のお陰で勉強はできたようだが、結局は俺の暇潰しに利用されている事実を見抜けない馬鹿。
退屈すぎて、死にそうだった。
そうして、入学から少し経った頃のこと。
「……誰だっけ、あの子」
なんとなく、視線が惹かれた。
ふわふわの猫っ毛の髪を揺らす彼女は、廊下を歩きながら眠そうに猫のような目を擦っていた。
気怠そうに彼女が歩く姿を、何人もの男女が盗み見している。抗えないというように、こっそりと、潜めた視線を送っていた。
「(えー、なにあれ?)」
強烈に、興味を引いた。
あんな印象に残る人間を見落とした事実に、形容し難い感情が膨らんでいく。
関心を持ったなら、あとは情報収集するのみ。
俺は、本人にも周囲にも気づかれないように時間をかけて、羽柴 葵子を調べた。
で、結論から言うと。
「俺よりも魔性じゃん……」
彼女は、とんでもなく人に好かれていた。