まことしやかな恋

 羽柴 葵子を形成する本質。華美ではないが端麗な容姿も含めて、すべてが魅力に満ちている。

 安直な表層で好意を持たれているのではない。俺が虚飾の姿で愛されているのだとしたら、彼女はありのままの姿を愛されていた。

 冷静沈着な性格もあって、彼女はクールで近寄り難い印象を持たれがちだ。しかし実際は、気分がいいとモノマネすらしてくれるようなお茶目な一面もある楽観的な思考の持ち主。

 そのギャップに、皆、射抜かれている。


「あー……羽柴さん? 冷たそうなんだけど話し掛けると、きちんと目を合わせて聞いてくれるし、困ってたら無言で助けてくれたりするよ。かっこいいよね」

「羽柴さんな〜、みんな知らねえと思うけどノリいいんだよな。フツーに見た目可愛いし。前にショートコントのお題を冗談で振ったらやってくれてさ。おもしろいよな」


 それとなく、彼女の同じクラスの人間に話を聞いたらこれだ。

 彼女のよさを隠したそうにして、彼女のよさを自分だけが知っていると、仄めかす。


「常に30位以内にいるので成績は優秀ですよ。でも彼女、関心がある分野がわかりやすくて、それがテストの結果にも反映されるので面白くて……」

「授業前の雑談で話した内容がお気に召したようで、放課後にお菓子と缶コーヒーを持って職員室に突撃しに来たことがあります。意欲があっていいですよね」


 教師でさえ、射抜かれている始末。

 エピソードが出てくれば出てくるほど、かなりの熱量で好かれている事実が浮き彫りになってくる。
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