まことしやかな恋
気分転換も兼ねて、繁華街を散歩していただけだ。日課になっていた情報収集や観察をやめたら時間を持て余してしまい、面白いことを求めて人の集まる場所に繰り出した。
そしたら、羽柴 葵子が不良相手に飛び蹴りする場面に遭遇してしまった。
正義感かと思いきや、喧嘩が目的。絡まれていた気弱そうな男を助けたわけじゃない。最終的にどちらの財布からも金銭を奪っていった。
「(え、これなんていう平等? 何の気なしに覗いた路地裏がこんなに面白いことある?)」
気弱そうな学生は、唖然としていた。助けてもらえると思ったら、普通の顔して財布からお金を抜かれたんだから驚きもする。でも、飲み物を買えるくらいの少額だ。不良に全額毟られるよりはマシだろう。
彼女に伸された不良たちは、呻いて汚い路地裏に転がっている。
善でも悪でも、あるようで。
善でも悪でも、ないようで。
俺は少し離れた場所で、それはもうお腹が痛くなるほど笑った。面白すぎて膝から崩れ落ちたし、笑いすぎて泣いた。
「はー、可笑し」
無理だ。諦め切れない。
「それなら?」
──羽柴 葵子にとって、雨宮 嗣海が特別になればいい。