まことしやかな恋

 次の日から、俺はあらゆる手段を使って、彼女に自分を意識させることにした。


「嗣海くんは、性格いいイケメンだよね〜」


 一段階目、雨宮 嗣海という存在を認識させる。

 良い印象でも、悪い印象でも、構わない。どんな感情を抱かれようとも、まずは彼女の視界に入れることを徹底した。幸い、俺は注目されやすい。生徒会も利用して多数の人間に噂されるよう仕向けた。

 これは、二年に進級する前にクリアした。


「生徒会メンバーは最低だけど、次期生徒会長の雨宮くんは例外」


 二段階目、生徒会を利用して違和感を持たせる。

 彼女は洞察力がある上に、軸が揺らがない。だから敢えて不信感を与えることにした。生徒会メンバーを焚き付けて、唆し、悪行をエスカレートさせる。わざと悪事の現場に遭遇させたりもした。

 結果、羽柴 葵子は、俺に胡乱な視線を向け、関わらないように距離を取った。

 これは、夏が来る前にクリアした。


「(……もう少しかな)」


 三段階目、接触して煽る。大詰め。

 俺は、羽柴 葵子を観察して、ある見解を導き出していた。なんで喧嘩に乱入していたのかという謎。それは陸上をやめたことに関係している気がした。

 ようは、刺激の代替だ。陸上は、一瞬の差で全部が決まる。報酬系を強く刺激し、ドーパミンに依存した高覚醒状態を作るため、怪我で離脱した彼女は刺激不足で、擬似的な高揚感を求めているのでないかと考察した。

 それならば、心理学的にも納得がいくし、口説き文句も最適なのがある。


「俺の、暇潰しになってよ」


 茜色に染まった図書室。

 羽柴 葵子の特別になりたい俺の企みは、大成功を収めた。
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