まことしやかな恋
二人きりになるのも、あんなに近くで口を聞くのも初めてで、柄にもなく緊張した。警戒して毛を逆立てる猫のような姿が可愛くて、口元が緩みっぱなしだったのを覚えている。
俺の印象が〝性悪〟なのも最高だ。
あと、名前呼びを許すのも、妙に隙があって狡かった。
約一年かけて俺は願ったものを手に入れたが、安心はできない。まだ仮のゴールだ。
「……え、なにしてんの。なんで急に生徒会の人たち退学させたの」
人気のない場所まで俺の腕を掴んで連れてきた葵子は、困惑の色を浮かべて問う。俺の腕をぎゅっと掴んでるのも、自然な上目遣いも可愛かった。
生徒会は、元々処分予定のおもちゃだ。不要になれば捨てるまで。葵子に飽きられないためにも、葵子に接触されないためにも、早急に手を打った。
それだけのこと。
「は? 夜の校舎に侵入したい?」
「今度は一日かけて心スポ巡りって……」
「真冬に海でバーベキューって馬鹿でしょ!!」
馬鹿みたいな遊びの提案をして、馬鹿みたいなことを二人で沢山した。
葵子は文句だらけだったけど、俺からの誘いを断ることはなくて。渋々といった表情をしながら、最終的にはいつも全力で楽しんでくれた。
俺も、このまま死んでもいいと思うくらい、毎日が楽しかった。