まことしやかな恋
帰り道は、ショックで覚えていない。自分の浅はかで愚かな言動に「しね」とぼやいた記憶だけある。
葵子にも運命のハートマークがあって、奇遇にも同じ場所で、嬉しかった。俺は内心有頂天で、運命だから大丈夫だろうと、素直に好きと伝えなかった。
自分を守るために、予防線を張った。
「さいてーだなぁ……」
きっと、失望された。葵子を傷つけて、結局自分も傷ついて、なにがしたかったんだろう? 葵子より大切なものなんてないのに。
俺はその日から死んだように過ごして、退屈な日々を消化した。
──約一ヶ月後。
意気消沈してる俺に、葵子の方から会いに来てくれた。相変わらず呑気で無防備な姿に、少し安堵する。
捨てられるかもという不安でのらくらと会話から逃げてしまったが、遂には、面と向かって友達でいたいと言われてしまった。
「(……嫌だね、恋人がいい)」
真剣な顔が可愛くて、愛おしくて。退路のない俺は開き直ってみることにした。
唇を奪ってみれば、思考が追いつかない葵子が困惑した様子で固まるから、調子に乗って舌まで入れてみる。噛まれそうになった。……けど、引かないよ。
会いに来てくれたのは、俺との関係に未練があるからでしょ?
「葵子が欲しいものと、俺が欲しいものは、違うわけ」
「……」
「つまり、どっちが欲しいものを先に手に入れられるか勝負だね」
賭けだ。
性格が悪いのは、百も承知。
毎日、葵子と付き合えますようにと祈って、俺は眠りについた。