まことしやかな恋

 簡単に折れるくらい細い手首を、シーツに縫いつける。今からすることを察せないほど鈍くはないはずなのに、葵子は「好きにしていいよ」と俺に告げた。


「(このかわいいもふもふ、野生をなくしてヘソ天してる猫と同じくらい危機感がないな……)」


 急所を噛んでも、擽ったいと身を捩らせるだけで逃げようとしない。わからないふりをして、あざとく可愛い顔をする恋人に、理性を捨てて抱えてる征服欲で滅茶苦茶にしたくなった。

 大切にしたいんだから、煽らないでほしい。

 そんな願いも儚く散る。やんわりと怯えさせてみれば、据え膳が自分から求めてきて、──理性の糸がプツン、と千切れた。
 

「……はっ、とける……」

「んー? とろんとろんだね」


 湿度の高い繋がりに、蕩けきった恋人が掠れ声を零す。柔らかな絹肌に唇を寄せて吸い付けば、それだけで呼吸を乱すから、吐息ごと塞いで飲み込んだ。


「んっ、ふ、うっ」

「息できないね、ごめんね、我慢して」

「は、うっ、ふぅっ」

「いいこ」


 どれだけ時間が経過したのか。俺もわからない。

 余裕なんてとうに消えてなくなり、夜通し抱くつもりだったからいいかと時計を見ず、欲望のままに貪っている。

 汗ばんだ額に張り付く髪を掻き上げながら、熟成された欲が尽きる気配のないことに「はは」と小さく笑った。


「なんでわらってんの、元気すぎ……」

「もーいっかい」

「……んっ、も、むり……」

「まだだよ、抱き潰させて」


 陶酔を通り越して力尽きてる恋人の左胸。

 心臓の上で淡く色づくハートマークに、赤い痣を散らす。

 運命の証に微笑んだ。
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