まことしやかな恋

 私も素直に言うことを聞いた。このバーより居心地のいいお店を見つけるのは不可能に近いのだから、城の主に従うまでだ。

 慈しむような眼差しを向けてきたマスターが、コトリと私の目の前にアイスを置いた。誰であろうと、関係値が変わろうと、マスターは線を引く。それが心地の良さに繋がっている。改めて、彼への好感を認識した。


「俺を差し置いて、いちゃいちゃしないでくれる?」

「何言ってんの?」

「ふふ、今日の嗣海くんはやきもちやきなんだね。寝不足だからかな」

「目敏いね、マスター。添い寝してくれる?」

「いやだよ。別の子を口説いて」

「……はぁ〜……」


 珍しく溜息を漏らす嗣海を盗み見ると、薄らと目の下に隈がある。顔色もよくないし、寝不足なのは間違いないのだろう。

 家に帰って寝ればよかったのに、と思うも、無粋な言葉はアイスと一緒に飲み込んだ。

 疲れていると口にすれば、確実に不貞腐れる。伊達に腐れ縁やってない。飲み過ぎないよう隣で見張るのが最適解だ。






 ──そう、思っていたのに。

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