まことしやかな恋






「……寝やがった」


 完全に、すやすや。

 バーカウンターに突っ伏している嗣海は、気持ちよさそうに瞼を閉じている。ものの数分しか目を離してないのに、なんでなの……。


「……マスター……」

「そんな弱々しい子猫みたいな声出しても、俺は嗣海くんの面倒をみないよ。もう店終いにするから持って帰ってね」


 バッサリ即答。救いは0だ。


「起きて」

「んー、なに……俺となにがしたいの……?」

「自力で歩いて、家に帰って」

「家、無理。葵子、俺のこと持って帰って」

「はぁ?」

「おやすみ」

「おやすみじゃな──、あ〜、もう……」


 私も眠気が襲ってきて投げやりになっていた。

 めんどくさい。起きたら帰せばいい。自分もはやく寝たい。

 油断に油断を重ね、迂闊にも、私は計算高い性悪男を、自宅に連れ帰ってしまったのだった。
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