まことしやかな恋

 ユラユラ。

 夢の船が揺れている。


「──……んん、……」


 水面を優しく撫でているような揺さぶりに、微睡んでいた意識が浮上した。けれど、まだ寝ていたい欲求が邪魔をして、狭間でユラユラと思考が揺蕩う。


「起きて」

「……な、に……」

「もう昼だよ。ぐずってもいいから起きて」

「ぐずって……ない……」


 朝を通り越した眩しい陽光に晒されて、重たい瞼をゆっくりと持ち上げた。

 私の睡眠を妨げたのは誰だと、寝ぼけ眼でぼやけるシルエットを睨めば、どこか甘い声色がくすくすと笑う。


「葵子、俺の前でそんなに無防備でいいの?」

「……べつに、いつもの、こと……」

「へえ? なら俺は、葵子が起きるまでその可愛いピンク色のハートマークを眺めてよっかな」

「……?」


 ピンク色? ハートマーク?


「…………………………!!!」


 一気に覚醒した頭が、衝撃で揺れた。


「あああぁぁぁぁっっ!!!」


 最悪だ。絶望だ。この世の終わりだ。
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