まことしやかな恋
手首が拘束されている。嗣海の重さがじんわりと伸し掛った。
物理的にマウントを取られて腹が立つが、抵抗したところで敵わないのも理解している。じたばた足掻いても無駄に体力を削るだけ。
それに嗣海は職業柄、握力が強い。
多少手加減されているとはいえ、手首を握られている時点で詰みだろう。
「生まれつきの痣なんて嘘。葵子が酔って寝てはだけてるの何回も見たけど、ハートマークの可愛い痣はなかったよ?」
「……じゃあ、なに? 噂は噂でしょ。まさか信じてるの?」
「だって、俺と葵子はキスしたじゃん」
「……」
「運命って認めなよ」
私の方が立場が弱い。なぜなら、証拠付きだ。
嗣海は噂を信じて、確定している。リアリストのくせにと言い返したいが、否定するにしても状況と状態は噂に一致。
もう、ほんと、こんな性悪と運命なんて世紀末もすぎるでしょ。
「はあ、馬鹿みたい。運命の人とキスすると身体にハートマークが浮かぶってなに? どういう原理? なにをもって運命? 非科学的すぎる」
「饒舌に現実逃避してるとこ悪いけど、認めたほうが楽だよ? 判断材料は揃ってるわけだし」
楽なわけあるか。
恨みを込めてぎろりと睨めば、こちらの思考は筒抜けだと嗣海は愉悦に口角を緩ませる。