まことしやかな恋
まじまじと珍しい表情を眺めていれば、視線に気づいた雨宮 嗣海が一瞬で計算された笑みを纏う。
「俺のことも好きに呼んでいいよ」
「好きに……性悪男」
「君に告白されたって言いふらしちゃおっかな」
即座に脅してくるあたり、やっぱり性格が悪い。
笑顔を崩さないのも、相手が的確にダメージを受ける嫌がらせを思いつくのも、雨宮 嗣海らしいといえばらしいけど。
「……嗣海」
名前を呼ぶと、研がれていた空気が和らいだ。無意識に肩の力が抜ける。彼への警戒心は、いつの間にかほとんど消え失せていた。
ため息を零し、私は机に軽く身体を預ける。
まだ、本題に入ってないだろうから。
「それで? 何が目的?」
直球で訊けば、彼は目尻と唇の端が互いに引き寄せられたみたいに緩くカーブを描く。
好意を持った相手に告白するときのような甘い微笑だが、そこに甘酸っぱい感情はない。あるのは、一欠片の好奇心。
獲物を見定める瞳孔が、悪戯に細まる。
「俺の、暇潰しになってよ」
ほんとうに、性格が悪い、と今日で何度目かの感想が脳内に漏れた。