まことしやかな恋
呆れた顔をまざまざと見せつければ、なんでか目の前の性悪は喜色を強める。
はあ、疲れてきた。
「嫌だけど」
「どうして?」
「私にメリットないし」
「そうかな?」
「何が言いたいの?」
含みのある笑顔を向けられ、小馬鹿にする疑問符に蓄積されたイライラが爆発した。相手のペースに乗せられるとわかっていたが、我慢は性にあわない。
じっと真正面から問えば、ゆっくりと男は椅子から立ち上がった。
恭しく私の左手を取り、試すように、言葉を紡ぐ。
「俺が怖い? 利用されると思ってる?」
「……喧嘩売ってる?」
覗き込んでくる瞳には、愉悦が滲んでいた。
掬いあげられた手を振り払うのは敗北を意味する気がして、王子様めいた所作で取られた指先を放置したまま会話を継続させる。
「いいや? 俺は提案してるんだよ。見切りをつけるのが早いのは賢い生き方だけど、利用価値があるものは利用した方がいいって。毎日退屈してるでしょ?」
「私を楽しませる自信があるって言ってる? それに自分に利用価値があると?」
「さあ? 確かめてみたら?」
「……」
「俺と過ごすのが退屈かどうか、利用価値があるかどうか、自分の目で確かめてみなよ」
むかつく。
けど、納得してしまった。
不敵に笑う姿は、果てしなく性格が悪い。でも、勝手に暇潰しにされるくらいなら、私も暇潰しに利用した方がいいのは事実だ。
「よろしくね」
奇妙な縁は、こうして結ばれた。