まことしやかな恋

 漏れ出そうになる暗いため息を飲み込んだ。保健室の空気が澱まないように、気を取り直して残りのパンを黙々と食べ進めていると、控えめなノック音。

 現れたのは、大人しそうな女子生徒だった。


「……あの、お食事中にすみません。相談したいことがあって……」

「はい、どうぞ」


 丁寧な言葉遣いの彼女には見覚えがある。今は体調不良も怪我人の生徒もいないため、不安そうにしている生徒を静かな保健室に招き入れた。

 小さなお弁当用らしきバッグを持ち、椅子に座った彼女が問う。


「ここで食べながら話してもいいですか?」

「いいですよ。人が来ないとは言いきれないので、その時は話を中断することになりますが構いませんか?」

「はい、それはもちろん」


 私もまだ昼食中だったので、一緒に食べることにした。

 お弁当を広げた女子生徒は「いただきます」と挨拶をしてから食べ始める。こちらから相談内容を聞くのはやめておいた。彼女にもペースがあるだろう。

 友人でも担任でもなく、養護教諭の元に彼女は相談しに来たのだ。貴重な昼休みに。自分の足で。

 心の準備はほとんど終えているだろうし、自分から話すのを待とう。


「……先生って、運命をどう思いますか?」


 不意に、飛んできた質問。

 咀嚼していたパンが、変な音を立てて気管に入りかけた。
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