まことしやかな恋

 心優しい女子生徒が、誤嚥しかけて噎せた私を「大丈夫ですか?」と心配してくれるので、問題ないと手で制す。

 運命という言葉に過敏になりすぎだ。

 真っ直ぐに自分を見つめてくる少女が、昔の自分と少しだけ重なる。大人として、先生として、対等な人間として、私は口を開いた。


「……運命は、出来事を簡単に片付けられる言葉だと思います」

「簡単に……?」

「宝くじに当選した、事故で怪我をした、誰かに恋をした。……これら全ての事象を運命で片付けてしまったら、人生がつまらないです」


 私の人生が、全て最初から決まっていたなんて反吐が出る。


「変えられない運命なんて嫌でしょう?」


 私は人生は、私の選択の連続だ。

 嗣海と出会ったのも、話をしたのも、暇潰し相手に選んだのも、一緒に過ごしたのも、大事にしていたのも、拒絶したのも、全部、私が決めたこと。

 運命だとしても、運命なんて言葉で片付けてはやらない。


「先生、ひねくれてますね……」

「人間はだいたいひねくれています」

「運命を信じていますか?」

「信じてなくはないです」

「案外、ロマンチストだったりして」

「…………」


 この、私が、ロマンチスト……?

 愕然として女子生徒を見遣れば、反応が愉快だと笑われてしまった。肝が据わった子だな。
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