まことしやかな恋
楽しげに笑い、肩の力を抜いた彼女は、視線を伏せる。華奢な指先で制服のスカートの裾を摘んで、太腿を露わにした。
「……そ、れ……」
再び、驚愕に目を見開く。
きめ細やかな白い肌に色付くピンク色と、くっきりとした形で存在するハートマーク。
自分の左胸に浮かんだそれと酷似したものに、密かに息を呑んだ。まことしやかな噂が信憑性を増すように自分以外にも姿を現した事実に、眩暈がする。
「先生、これ、痣じゃないと思うんです」
「……どうして、そう思うの?」
「だって、私、好きな人とキスして、その次の日に見つけたんです」
「……」
「転んだり、ぶつけたり、してません。もし気づかないうちにできた怪我だとしても、こんな桃色で綺麗なハートマークは変じゃないですか?」
衝撃が、冷静な思考と言葉を奪っていく。
でも、彼女は嘘を言っていない。
泣きそうに唇を噛んで、へたくそに笑顔を作った彼女が俯いた。
「最初、見つけたときは、嬉しかったんです。好きな人が運命で、無敵になった気分でした。……だけど過ごしていくうちに気づいたんです。運命と恋は、別物だってことに」
諦観したような口ぶりの彼女の声が、暗がりに沈んでいく。
私も錘をつけられたみたいに、心が引き摺られた。
「私の運命の人が彼でも、彼の運命の人は私じゃないかもしれない」
どうして、私も気づかなかったのか。
運命があるのなら、嗣海の運命の人はいったい誰なんだろう?