まことしやかな恋

 脳裏に過ぎるのは、私の運命を信じようとした嗣海の姿だ。なんかもう、わからなくなってきた。

 小さく呼吸を整えて、女子生徒と向かい合う。涙を堪えて、必死に不安の感情を堰き止めようとする彼女と目線を合わせた。

 握りしめたスカートの裾、ハートマークの上に涙がぽとりと落ちる。


「もし、運命じゃなくても、彼のことを好きになりましたか?」

「……なり、ました……」

「では、まことしやかな運命よりも貴女の恋心の方が確かです。貴女が知る彼と、貴女の選択を信じてみましょう」

「……っ、はい、ぐすっ」


 涙の雫を、指先で掬った。

 彼女へ向けた言葉は、図らずも自分に返ってきて突き刺さっている。運命に誘導されていたのは、私もだった。


「ちなみに、その彼とは付き合ってるんですか?」

「……っ、はい……」

「鼻血を出した貴方を抱えて運んできた元気な子ですよね。上手くいったようで何よりです」

「っ、な、なんっ、覚えてたんですか……!?」

「私、記憶力いいので」

「……〜〜ッッ!」


 顔を真っ赤に染めている少女の顔は、恋をしていた。

 ロマンチストだと揶揄ってきた仕返しです。

 逃げ帰るように、けどお礼は忘れずに去っていった真面目な彼女の背中を見送る。

 私はため息を溶かして、小さな覚悟を決めた。
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