まことしやかな恋
話をしに来たのに、なぜ眠気に襲われて、そのまま寝そうになっているのだろうか。湯呑みを取り上げられた気配もする。あと手をマッサージされてる。
むにむにと、一定の圧で解され、血の巡りがよくなるのを、じんわりと上昇する体温から感じた。
寝かしつけられている気分だ。
「……ねえ、寝させようとしてる?」
「うん。おやすみ」
「話にきたんだけど」
「おやすみ」
対話を、拒否されている。
強引に寝かしつけて会話から逃げるのは、面倒事を嫌う嗣海らしいやり方ではあるけど、さすがにどうかと反発心で目を開けた。
陽炎のようにゆらゆらと揺れる瞳が、私を射抜いている。
そこはかとない不安の色は、都合のいい幻なのかな。
「大嫌いは、撤回する。……あのときは、本気で嫌いで言ったけど」
「手当てする振りして刺してきたね」
「いいから、聞いて」
今の、悪気はないんだろうけど、お喋りな嗣海にいちいち反応していたら話が進まない。
軽く肩を竦めて口を閉じた嗣海を横目に、ふっと息を吸った。
「もし、運命の人がいるとして、運命は何を指すか考えてみた。必ずしも、恋や愛に限定するものではないし、親友を運命の人って呼んでる可能性もある」
「……それで?」
「運命で片付けられる相手なら、めんどくさくないなんて願望でしょ。不幸や過ちもまるっと運命に含まれるかもしれないんだから」
「……」
「私は、嗣海と──」
目が合う。覚悟は持った。
「まことしやかな運命の、友達でいたい」
神秘的な瞳が、きらりと艷めく。指先で頬を撫でられ、優しく、
────唇を、奪われた。
「や〜だ」