まことしやかな恋

 それなりに度数のある液体を喉に流す。お酒の力を借りることにした。


「まことしやかな噂が、本当でも嘘でもどうでもいいの。医者でも学者でもない人間が解明するのは不可能に近いし」

「うん」
 
「この悪趣味なハートマークの消し方とか、運命がどうとか、全部どうでもよくて。ただ……」
 
「ただ?」
 
「嗣海と友達でいられなくなりそうなのが嫌」


 本心を言葉にしたことで、感情の輪郭が鮮明になる。
 
 覚悟を決めて、友達でいたいと告げた。それをあっさりと拒否されて、どうすればいいかわからなくなった。
 
 腐れ縁の男だとあしらっていたくせに、本当はその男との友情に固執していたなんて気恥ずかしいけど。


「……葵子ちゃんの気持ちはわかったよ。それを踏まえて、俺が思ったことを言ってもいい?」
 
「うん」
 
 
 緊張から喉が渇く。
 
 何に緊張してるのか自分でもわからない。見て見ぬふりしていたものを、躊躇なく暴こうとするマスターの視線から、逃げたくなった。
 

「運命とかハートマークとかは問題の導入だと思うんだ。変化のきっかけにすぎない。だって、君たちは相手に求めているものが違う。だから、一緒にいたいなら、折り合いをつけないといけない」
 
 
 私が求めているもの。嗣海が求めているもの。
 
 それは、多分、重なっていない。
 
< 45 / 129 >

この作品をシェア

pagetop