まことしやかな恋
嗣海の欲しいものに、気づいていないと言えば嘘になる。納得こそできないが、私は薄々勘づいていたのだ。けれど、自分に都合のいい結果を求め、相手に押し付けた。
友達でいたかったから。
「先に言っておくね。嗣海くんを擁護してるんじゃないよ。彼は案外臆病だから、自分が傷つかないように予防線を張ったんだろうけど、とっても愚策だ」
「ふっ、本人が聞いたら不貞腐れそう」
「拗ねるだろうから内緒にしてね」
マスターがあざとく右目をパチンと閉じる。お茶目な仕草に気が抜けた。
視線を落とせば、グラスの中の液体が波紋を作って揺らめいている。一口で飲み干して、私は続く言葉に耳を傾けた。
「友達でいたい君の願いは、君だけのもの」
「……」
「相手も同じとは限らない。君と友達でいるために飲み込んだ言葉が、きっと沢山あると思うよ」
大切な誰かのために伝えた言葉。
大切な誰かのために伝えなかった言葉。
どちらも、誰かへの優しい想いだ。
「ひとつ、聞いてもいい?」
穏やかな音色で紡がれ、小さく頷きを返す。
「あの日、君とキスした嗣海くんにも、同じ運命のハートマークが浮かんでいたらどうする?」
もし、同じ運命なら……。
ストン、と落っこちてきた答え。鬱屈とした悩みが塵になっていった。