まことしやかな恋

 ˚‧ 𓆸

 嗣海の住むマンションは、私の住むマンションから徒歩5分の距離にある。物件は毎回あの横暴性悪に決められているから、徒歩5分以上の距離になったことはない。よく考えたらおかしい。

 部屋の合鍵も取られてるし、渡されているし、よく考えなくてもおかしい。


「(なぜ気づかなかった……?)」


 コンビニで買った缶チューハイを片手に、のんびりと夜道を歩いて考察してみた。

 嗣海の家まで徒歩5分。しかし、私がバーを出て夜道を闊歩しはじめて20分は経過してる。別に、緊張はしてないけどね。微塵もしてないけどね。

 冷たいアルミ缶の中は残り半分ほど。夜の静けさをツマミに、柑橘系の炭酸をちびちびと飲む。飲み終えたら突撃しようかな、なんて。

 悠々閑々と散歩していたのがよくなかった。


「……? なんか、騒がしい?」


 夜の静寂には不釣り合いな声がする。何人かが争っていると判断して、面倒事からは逃げようと踵を返したのだが──


「うわあああ! しばちゃあああん!!」

「あぶな」


 突如、舗道に飛び出してきたのは生徒。見たことある元気な生徒。


「たすけて! まじヘルプ! 警察! 俺のクラスメイトが喧嘩してて、ぼこられてて、めちゃめちゃ怪我してる!」

「……うそお……」


 勤務時間外だぞ。

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